
本ケーススタディは、実際に小売電気事業者に対して行われた行政指導の事例をもとに、実務上の注意点を整理・解説するものです。
今回取り上げるのは、供給条件の説明を電話で行う場合における「書面不交付」に関する事例です。
供給条件の説明方法は、小売電気事業登録申請時はもちろんのこと、登録後に実施される行政指導や監査においても、必ず確認される重要なポイントの一つとなっています。
本ケーススタディを通じて、事業内容や営業形態に応じた適切な小売電気事業体制の整備について、理解を深めていただければ幸いです。
- 事例の概要
- 根拠法令
- 背景にあるリスク
- 行政指導・監査のポイント
- 対策
- 本事例から学ぶ
1. 事例の概要
小売電気事業を営むA社は、当初、対面による訪問営業を中心に契約を締結していました。
しかし、営業手法の見直しに伴い、電話による供給条件の説明および契約締結を行う方式へと切り替えました。
A社は、電話勧誘によって契約を締結するにあたり、
供給条件の説明を書面で交付することなく契約を成立させており、
また、契約締結後においても、書面の交付を行っていませんでした。
このような運用が継続されていたことから、供給条件説明義務および書面交付義務の履行状況について、行政から問題視されることとなりました。
2. 根拠法令
供給条件の説明を電話で行う場合における「書面不交付」に関する法令は次のとおりです。
電気事業法
(供給条件の説明等)
第二条の十三
1 小売電気事業者及び小売電気事業者が行う小売供給に関する契約(以下「小売供給契約」という。)の締結の媒介、取次ぎ又は代理を業として行う者(以下「小売電気事業者等」という。)は、小売供給を受けようとする者(電気事業者である者を除く。以下この条において同じ。)と小売供給契約の締結又はその媒介、取次ぎ若しくは代理をしようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、当該小売供給に係る料金その他の供給条件について、その者に説明しなければならない。
2 小売電気事業者等は、前項の規定による説明をするときは、経済産業省令で定める場合を除き、小売供給を受けようとする者に対し、当該小売供給に係る料金その他の供給条件であつて経済産業省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 小売電気事業者等は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、小売供給を受けようとする者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて経済産業省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該小売電気事業者等は、当該書面を交付したものとみなす。
電気事業法施行規則
(供給条件の説明等)
第三条の十二
7 法第二条の十三第二項の経済産業省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法第二条の十三第二項の書面を交付することなく電話により同条第一項の規定による説明を行うことについて小売供給を受けようとする者の承諾を得ている場合
二 小売電気事業者又は取次業者が既に締結されている小売供給契約を更新しようとする場合であって、法第二条の十三第二項の書面を交付することなく同条第一項の規定による説明を行うことについて小売供給を受けようとする者の承諾を得ている場合
三 小売電気事業者又は取次業者が既に締結されている小売供給契約を変更しようとする場合(法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる形式的な変更その他の当該小売供給契約の内容の実質的な変更を伴わない変更をしようとする場合に限る。)であって、法第二条の十三第二項の書面を交付することなく同条第一項の規定による説明を行うことについて小売供給を受けようとする者の承諾を得ている場合
3. 背景にあるリスク
小売電気事業において、供給条件の説明や書面交付は電気事業法等で厳しく定められている事項です。
書面不交付が認められるのは限定的な場合に限られます。
要件を満たしていない場合、行政指導、業務改善指示、場合によっては事業運営への重大な影響等が生じるリスクがあります。
4. 行政指導・監査のポイント
実際の監査やヒアリングでは、次のような点が確認されます。
- 電話でどのような供給条件を、どこまで説明したのか
- 書面不交付について、顧客の同意をどのように取得したのか
- 説明を行った事実を示す客観的な記録が残っているか
- 社内で説明方法が統一されているか
5. 対策
電話による供給条件の説明および契約締結方式を採用する場合には、以下の点を整理する必要があります。
- 書面不交付が認められる法的要件の整理
- 電話説明時に必ず説明すべき事項の明確化
- 説明内容を統一するためのトークスクリプト案の作成
- 監査時に説明可能な記録(日時・担当者・概要)の残し方の整理
また、次の事項についても対応が求められます。
- 法令順守状況の確認
- 法令順守体制の整備
- 役員及び従業員への周知徹底
6. 本事例から学ぶ
本事例は、小売電気事業者が供給条件の説明に関して不十分であったとして、行政指導を受けたものです。
この事例からも分かるとおり、小売電気事業登録申請においては、供給条件の説明体制が重要な審査ポイントとされています。
小売電気事業登録申請に際し、法令に基づいた適切な供給条件の説明体制が構築されていることを、申請書類上で十分に説明することが重要です。
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