
ロシアとウクライナとの戦争を契機として、日本を含む各国では、経済制裁や安全保障の観点から、ロシア向け輸出に対する規制が大幅に強化されました。
これに伴い、2022年3月18日より、ロシア等への輸出の一部について、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)第48条第3項に基づく経済産業大臣の承認が必要になりました。
「以前は承認不要だった」といった誤った認識のまま輸出を行ってしまうと、外為法違反を問われてしまうおそれがあります。
本ケーススタディでは、ロシア向け輸出について実際に経済産業省から警告を受けた事例をもとに、なぜ輸出承認が必要と判断されたのか、そして輸出実務においてどのような点に注意すべきかを解説します。
- 事例の概要
- 経済産業省の対応
- なぜ輸出承認が必要だったのか
- この事例から分かる実務上のポイント
- 輸出許可(承認)申請における実務上の教訓
- まとめ
1. 事例の概要
経済産業省は、2025年12月、株式会社Aに対し、外国為替及び外国貿易法(外為法)違反を理由とする警告を行いました。
同社は、2022年から2024年にかけて、ロシア向けに輸出規制の対象となっているバイクを、経済産業大臣の承認(輸出承認)を受けることなく輸出していたことが判明しました。
この行為は、制裁措置に基づく輸出規制を無視した輸出に該当し、外為法に違反するものと判断されました。
2. 経済産業省の対応
本件について経済産業省は、
- 貿易関連法規に対する理解不足
- 輸出管理体制の不備
を重大な問題と捉え、貿易経済安全保障局長名で、次の内容を含む警告を行いました。
- 厳正な輸出管理の実施
- 輸出管理方法の明確化
- 法令遵守体制の徹底
- 再発防止策の構築
これは、単なる注意ではなく、今後の行政対応や処分の前提となり得る重い警告です。
3. なぜ輸出承認が必要だったのか
2022年3月18日より、輸出貿易管理令により規制されている貨物のロシア・ベラルーシを仕向地とする場合やウクライナを仕向地とする場合は、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)第48条第3項に基づく経済産業大臣の承認が必要になりました。
なお、一部の例外を除き、原則、輸出は承認されません。役務取引についても同様です。
ただし、次のいずれかに該当する場合には、承認される場合があります。
(1)食品・医薬品
(2)人道支援の目的で輸出するもの
(3)サイバーセキュリティの確保に関するもの
(4)海洋の安全に関するもの
(5)消費者向けの通信機器(パーソナルコンピュータ、スマートフォン等(ベラルーシ又はロシアの政府機関又は国有企業向けを除く。))
(6)民間向けの通信インフラ(インターネットを含む。)に関するもの
(7)政府間で輸出するもの(宇宙協力等の非軍事分野における政府間協力等)
(8)最終需要者が法人の場合であって、当該法人の全ての株式を日本又は通達の別紙に掲げる国・地域の法人が出資した法人(合弁を含む。)向けの輸出。
(9)我が国のエネルギー安全保障のため特に必要なもの(ロシアの軍事侵略能力への直接的な貢献が認められない場合であって、サハリン1、サハリン2及びアークティックLNG2プロジェクトの遂行上欠くことのできないものとして資源エネルギー庁が認めるものに限る。)
上記のとおり、食品や医薬品、人道支援目的の輸出など、例外的に輸出が承認される可能性があります。
しかし、事前に資源エネルギー庁の確認が必要とされており、輸出承認申請において大変厳しく審査されることが窺われます。
本件のように「バイク」という一見すると一般消費財に見える製品であっても、
- 輸出先(ロシア)
- 国際情勢(制裁対象国)
- 規制内容(包括的・品目別規制)
によっては、経済産業大臣の承認なしでは輸出できないという点に注意が必要です。
つまり、「危険な物ではないから大丈夫」「今まで問題なく輸出できていたから大丈夫」という認識は、極めて危険であることを示しています。
4. この事例から分かる実務上のポイント
① 輸出許可(承認)の要否判断を誤るリスク
輸出許可(承認)が必要かどうかは、
- 品目
- 仕向地(輸出先国)
- 用途・需要者
- 規制の種類(制裁・安全保障)
を総合的に判断する必要があります。
一部でも判断を誤ると、無許可輸出=外為法違反となります。
② 「知らなかった」では済まされない
外為法違反は、
- 故意でなくても成立する
- 企業規模に関係なく対象となる
という特徴があります。
実際、本件でも「知らなかった」「認識不足」であっても、警告という行政対応が行われています。
③ 輸出管理体制そのものが見られる
経済産業省は、単発の違反だけでなく、
- 社内の輸出管理ルール
- 担当者教育
- チェック体制
といった 組織的な管理体制を重視します。
5. 輸出許可(承認)申請における実務上の教訓
この事例は、「実際に違反してから対応する」のでは遅いことを明確に示しています。
特に重要なのは、次の点です。
- 該非判定の正確な実施
- 輸出先・用途規制の確認
- 輸出許可が必要な場合の事前申請
- 社内での輸出管理ルールの整備
輸出ビジネスを検討している企業は、これらの点を踏まえ、事前に適切な輸出管理体制を整備しておくことが重要です。
6. まとめ
本事例は、一見すると通常の商品であっても、輸出先や国際情勢によっては輸出許可(承認)が必須となること、そして無許可輸出が重大な法令違反となることを示しています。
輸出許可の判断に少しでも迷いがある場合は、事前に専門家へ相談することが、最大のリスク回避策です。
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